「嫌われる勇気」を10年ぶりに読み返して思うこと

私が『嫌われる勇気』を初めて読んだのは、今から10年ほど前のことです。
当時も衝撃を受け、自分の考え方に多大な影響を与えてくれました。
それから大学生活、大学院、そして社会人としての経験を積み重ねてきましたが、気づけば本書で書かれている「目的論」や「課題の分離」の考え方は、ずっと自分の思考の根底にあり続けていたように思います。
そして今年4月から家業に入ったことをきっかけに、改めて自分の考え方を見つめ直したくなり、久しぶりにこの本を手に取りました。
変わらないという「目的」を決断し続けている
アドラー心理学の大きな特徴のひとつが、「目的論」です。
「目的論」とは、何かしらの目的があって、その目的を達成するために感情や行動を使い分けているという考え方です。
これは、「過去の出来事が現在を決める」とする「原因論」とは対照的です。
たとえば、過去のトラウマのせいで今の自分がこうなったと考える人がいるとします。
アドラー心理学では、そうではなく「変わらない自分であり続けるために、過去のトラウマを利用している」と捉えるのです。
つまり、私たちは無意識にでも“変わらないという決断”を日々し続けているのだという見方です。
誰しもが思い出したくないような過去の1つや2つはあるものです。原因論で捉えると、それらがずっと自分を縛り続けてしまう。
でも「目的論」では、今からでも自分を変えることができる。若くても、年を重ねても、人はいつからでも変わることができる。
この考え方に、私はいつも勇気をもらっています。
課題の分離という考え方
もうひとつ、私の中で強く根づいているのが「課題の分離」という考え方です。
これは、「自分の課題」と「他者の課題」を明確に分けるというもの。
他人の課題には、たとえ大切な人であっても土足で踏み込んではいけない。
サポートはできても、最終的にその課題をどうするかは本人の決断に委ねるべきだという考え方です。
「人は自分のことは変えられても、他人のことは変えられない」
いくら相手を変えたいと願っても、最終的にその人が変わろうと思わない限り、変化は訪れません。
それどころか、相手が変わらないことにイライラしてしまえば、関係性そのものが壊れてしまう危険すらある。
本書で紹介されている「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」という言葉には、この「課題の分離」の本質が詰まっていると思います。
これから家業を通して、さまざまな人と関わっていく中で、他者からいろんなことを言われたり、求められることもあるでしょう。そのときに「これは誰の課題なのか?」と一度立ち止まって考えるクセをつけていきたいと感じました。
嫌われる勇気を持つということ
タイトルにもある「嫌われる勇気」。
これはこの本の中で一番有名なフレーズではないでしょうか。
私自身、10年経った今でも、これを本当の意味で持てているかと問われれば、正直自信がありません。
「自分さえ我慢すれば丸く収まる」
「争いたくないから言わないでおこう」
そんなふうに思って、自分の意見や本音を飲み込むことがいまだにあります。
本書の中に「他者から嫌われたくないと思うこと。これは人間にとって、きわめて自然な欲望であり、衝動である」と書かれています。
この「嫌われたくない」という感情が、無意識に私たちの行動を縛っているのだと気づかされます。
私はこれから自分の生き方を貫いていきたいと思っています。
だからこそ、「嫌われたくない」という気持ちに抗う努力をしていきたい。
それくらい強い衝動なのだと捉えて、「他者から嫌われたくない欲望」を”三大欲求”のようなものとして、意識し続けていきたいと思っています。
勇気を持つためには
「目的論」「課題の分離」「嫌われる勇気」
これらを実践するには、結局のところ“勇気”が必要です。
自分を変える勇気
他者に委ねる勇気
嫌われるリスクを取る勇気
頭ではわかっていても、いざ一歩を踏み出すとなるとやっぱり怖い。
私自身、そう感じることが多々あります。
本書の中には、こんな一節があります。
「人は、自分には価値があると思えたときだけ、勇気を持てる」
その「価値」は、他人から与えられるものではなく、「私は他者に貢献できている」と自分で思えるときに初めて感じられるものです。
私が住宅の現場監督をしていた頃、お施主様に家をお引き渡しする際に、
「クラウスさんのおかげでいい住宅になりました。本当にありがとうございました」
と、声をかけていただいたことがあります。
そのときの心のあたたかさと、少しだけ自信が芽生えた感覚は、今でもはっきりと覚えています。
仕事でも、プライベートでも、こうした経験の積み重ねが「自分には価値がある」という感覚を生み出し、少しずつ勇気を持てるようになっていくのだと信じています。
クラウスのひとりごと
10年前と今とでは、自分の置かれている立場も、考え方も大きく変わりました。でも、『嫌われる勇気』から学んだ大切な教えは、今でも私の中で生き続けています。また10年後に読み返したとき、どんなことを思うのか。そんな楽しみを抱きながら、今この瞬間を生きていきたいと思います。